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2022.03.28
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メキシコ、原油高はペソ相場を支えるも、中銀は難しい対応を迫られる展開
~中銀の独立性に疑念、原油高の追い風にも拘らず米FRBの動きに追随せざるを得ない展開も~
西濵 徹
- 要旨
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- 足下の世界経済を巡っては国際商品市況の上昇に伴う全世界的なインフレ懸念の高まりが警戒される。米FRBなど主要国中銀はタカ派傾斜を強めるなか、新興国を取り巻く状況は厳しくなる一方、商品高は資源国にとり追い風となる動きもみられる。メキシコでは資源高が通貨ペソ相場の底入れを促すも、物価高を理由に中銀は繰り返し利上げを行うなど、物価高と金利高の共存が景気に冷や水を浴びせる懸念がある。中銀は24日の定例会合で7回連続の利上げ実施を決定したが、大統領が直前に決定内容を公表するなど中銀の独立性に対する疑念が高まる動きもみられた。メキシコは過去の米FRBの利上げ局面では景気動向に関係なく利上げを余儀なくされたが、原油高の追い風にも拘らず先行きも同様の展開が予想される。
足下の世界経済を巡っては、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに欧米諸国などがロシアに対する経済制裁に動いたことを受けて、ロシアからの原油や天然ガスなどの天然資源のほか、穀物供給が滞るとの見方を背景に国際商品市況は上振れしており、全世界的にインフレ圧力が一段と強まることが警戒されている。こうした事態を受けて、米FRB(連邦準備制度理事会)をはじめとする主要国中銀は『タカ派』姿勢に傾斜する動きをみせており、新型コロナ禍を経て全世界的な金融緩和を追い風に国際金融市場は『カネ余り』の様相を強めてきたものの、そうした状況は手仕舞いされつつある。また、国際金融市場においては全世界的な金利低下を背景により高い収益を求める動きが強まり、一部のマネーは新興国に向かう流れがみられたものの、カネ余りの手仕舞いや主要国での金利上昇の動きはそうした展開を逆流させることが懸念される。他方、国際商品市況の上昇は、鉱物資源や穀物などの輸出国にとって交易条件の改善を促すことで景気の押し上げに繋がることが期待されており、上述のように国際金融市場を取り巻く環境は厳しさを増すなかでも資源国では資金流入が続くなど、選別の動きが広がっている模様である。米国の隣国であるメキシコにおいても、足下では原油をはじめとする国際商品市況の上昇を追い風に資金流入が続き、通貨ペソ相場は底入れする展開が続いている。なお、過去の米FRBによる利上げ局面においては中銀が資金流出を警戒して景気動向に関係なく利上げ実施に追い込まれるなど難しい対応を迫られた。その一方、足下のメキシコ経済を巡っては、輸出の大宗を占める米国経済の堅調さが景気の追い風になることが期待されるものの、ロペス=オブラドール政権による『反ビジネス』色の強い施策や財政規律を重視した政策運営が景気の足を引っ張る展開が続いている。さらに、昨年以降は原油をはじめとする国際商品市況の上昇などを追い風にインフレ率は加速感を強めて中銀の定めるインフレ目標を大きく上回る推移が続き、中銀は物価抑制を目的に繰り返し利上げを実施するなど、物価高と金利高の共存が景気に冷や水を浴びせることが懸念される状況にある。また、年明け以降はオミクロン株による新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染が再び拡大して過去の『波』を上回る事態となり、人の移動に下押し圧力が掛かるとともに、製造業を中心とする企業マインドも鈍化するなど景気に悪影響を与える動きもみられた(注1)。メキシコ国内における新規陽性者数は1月末を境に頭打ちに転じているほか、感染動向の改善も追い風に人の移動も底入れしており、感染動向による景気への悪影響は大きく後退している。しかし、足下ではインフレが一段と上振れしており、中銀は24日に開催した定例の金融政策委員会で7会合連続の利上げ決定し、昨年12月、先月に続いて3会合連続で50bpの大幅利上げに動くなど、米FRBのタカ派傾斜による米ドル高がペソ安を招くことに対応している。他方、24日の定例会合では、会合前にロペス=オブラドール大統領が決定内容を公表するハプニングが発生しており、昨年末に中銀総裁人事に対して政府が介入する動きがみられたことを勘案すれば(注2)、今後も中銀の独立性に対する疑念が高まることも考えられる。中銀のロドリゲス総裁は、先行きの政策運営について米FRBの政策運営に関係なく、物価動向に応じて決定するとの考えを示しているものの、足下のインフレ率が一段と上振れしている上、米FRBがタカ派姿勢を強めていることを勘案すれば、中銀も同様にタカ派への傾斜を余儀なくされることも考えられる。その意味では、これまで同様に景気動向に関係なく金融引き締めに動かざるを得なくなる可能性は高まるであろう。


注1 2月4日付レポート「メキシコ景気はリセッション入り、先行きも足かせとなる材料が山積」
注2 2021年12月8日付レポート「メキシコ中銀、次期総裁の手腕は未知数も、金融市場の混乱はひとまず一服」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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