インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

メキシコ中銀、米FRBに追随して利上げ幅縮小、利上げ局面の終了間近も示唆

~米FRBのターミナルレート引き上げとは対照的、ペソ相場は上値が抑えられる展開が続く可能性~

西濵 徹

要旨
  • 足下のメキシコ経済は米国経済の底入れの動きを追い風に堅調な推移が続く一方、商品高を受けて生活必需品を中心とするインフレに直面している。さらに、米FRBのタカ派傾斜による資金流出懸念に対応して、中銀は昨年半ば以降断続的な利上げ実施に追い込まれるとともに、過去数会合は米FRBに歩調を併せる形で大幅利上げを実施してきた。足下のインフレ率は頭打ちする一方、コアインフレ率は加速が続くなどインフレ懸念はくすぶるものの、米FRBの利上げ幅縮小に歩を併せる形で中銀は15日の定例会合で13会合連続の利上げ実施に動くも、利上げ幅を50bpに縮小させた。その上で、先行きの政策運営について利上げ局面の終了が近付いていることを示唆する動きをみせる。米FRBがターミナルレートの引き上げを示唆したことと対照的な動きはペソ相場の重石となると見込まれる一方、コアインフレの加速が続くなかでは一段の金融引き締めを迫られる可能性もあり、当面ペソ相場は中銀の政策判断に左右される展開が続くであろう。

メキシコ経済を巡っては、輸出の8割を占めるとともに、GDPの4%に相当する移民送金の流入元の大宗を占める米国経済の底入れの動きを追い風に、景気は着実に底入れの動きを強める動きをみせている。他方、商品高による世界的なインフレを受けて米FRB(連邦準備制度理事会)など主要国中銀はタカ派傾斜を強めてきたため、足下の米国においては物価高と金利高の共存が景気に冷や水を浴びせる懸念が高まっている。また、米FRBのタカ派傾斜の動きは世界的なマネーフローに影響を与えるとともに、経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)の脆弱な新興国を中心に資金流出が加速する動きがみられた。メキシコでは、1990年代の米FRBの利上げ局面において通貨危機に陥ったものの、当時のペソ相場は米ドルにペッグ(固定)されており、資金流出に伴うペソ安圧力に対して為替介入を通じた為替相場の維持を図る必要があったため、結果的に外貨準備が枯渇して通貨切り下げを迫られた。しかし、その後のペソ相場は変動相場制に移行しており、制度的に為替介入を行う必要性はなくなっている。ただし、商品高による世界的なインフレはメキシコにおいても食料品やエネルギーなど生活必需品を中心とするインフレを招いており、コロナ禍からの景気回復も相俟ってインフレ率、コアインフレ率ともに中銀の定めるインフレ目標を大きく上回る推移が続いてきた。よって、中銀は昨年6月に物価抑制を目的とする利上げ実施を決定したほか、その後はペソ安による輸入物価の押し上げを通じたインフレ昂進の抑制を目的に断続利上げを余儀なくされてきた。さらに、米FRBがタカ派傾斜を強めたことに歩を併せる形で利上げ幅を拡大させており、11月の定例会合においても12会合連続の利上げに加え、4会合連続で75bpもの大幅利上げの実施を決定する動きをみせてきた(注1)。なお、足下においては米国のインフレ率が頭打ちしているほか、米FRBのタカ派傾斜の後退観測の高まりを反映して米ドル高が一服する動きがみられるなど、国際金融市場を取り巻く環境に変化の兆しが出ている。他方、メキシコのインフレ率も11月は前年比+7.8%と依然インフレ目標(3±1%)を大きく上回る推移が続くも前月(同+8.4%)から伸びが鈍化するなど頭打ちしているものの、景気の底入れが続くなかでコアインフレ率は同+8.5%と前月(同+8.4%)から加速するなど、インフレ懸念がくすぶっている。こうした状況ながら、中銀は15日に開催した定例会合において13会合連続で引き上げる決定を行うも、米FRBが直前のFOMC(連邦公開市場委員会)において50bpに利上げ幅を縮小させたことに歩を併せて利上げ幅を50bpに縮小する決定を行った。これを受けて政策金利は10.50%と2008年に現行制度が開始されてからの最高水準を更新する。会合後に公表した声明文では、今回の決定も「4(50bpの利上げ)対1(25bpの利上げ)」で票が割れており、様々なところで利上げの打ち止めなどに言及する動きをみせるエスキベル副総裁が反対票を投じたことを明らかにしている。なお、先行きの政策運営を巡っては「次回の定例会合においても追加利上げを行う必要があると判断している」とした上で、「利上げ幅については景気実勢に基づく形でその必要性についても評価する」とするなど、追加利上げに含みを持たせるも利上げ局面の終了が近付いていることを示唆している。上述のように足下の国際金融市場においては米ドル高の動きに一服感が出ているものの、ペソ相場を巡っては上値が抑えられる展開が続いており、中銀の利上げ余地が限られつつあることを反映しているとみられる。先行きについても、米FRBはFOMCにおいてターミナルレート(金利の最終到達点)を引き上げるなど一段の利上げを意識する動きをみせる一方、中銀は利上げ局面の終了が近付いていることを示唆するなど対照的な姿勢をみせており、ペソ相場の上値は重い展開が続くことは避けられない。他方、コアインフレ率は依然加速が続くなどインフレ圧力がくすぶるなかでは結果的に一段の金融引き締めを迫られる可能性もあり、当面のペソ相場は中銀内の判断に左右される展開が続くと予想される。

図表1
図表1

図表2
図表2

以 上

西濵 徹


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

執筆者の最近のレポート

関連テーマのレポート

関連テーマ