インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

台湾中銀、米トランプ次期政権を警戒して慎重姿勢を維持する構え

~成長率見通しを上方修正も米国の通商政策を織り込まず、状況に応じてタカ派傾斜にも含み~

西濵 徹

要旨
  • 台湾中銀は19日の定例会合において、3会合連続で政策金利を2.000%に据え置いた。台湾のインフレは緩やかに頭打ちする一方、不動産市況は高騰が続いてきた。よって、中銀は不動産市況の鎮静化を目的に、6月、9月と2会合連続で預金準備率の引き上げに動いた。足下では不動産市況に頭打ちの兆しが出ており、今回は預金準備率を据え置くなど引き締めスタンスを後退させた。なお、実体経済を巡っては外需の回復を理由に今年、及び来年の成長率見通しを上方修正する一方、米トランプ次期政権の通商政策を織り込んでおらず、その動向を注視する必要性を強調している。その上で、同行の楊総裁はハト派に傾く可能性を否定する一方、状況に応じてタカ派に傾く可能性に言及するなど、慎重姿勢を維持する模様である。台湾ドル相場を巡って過度な変動に介入で対応する考えを示すなど、当面は防戦が続くと予想される。

台湾中央銀行は、19日に開催した定例の金融政策委員会において、政策金利を3会合連続で2.000%に据え置く決定を行った。ここ数年の台湾では、コロナ禍一巡による経済活動の正常化や商品高に加え、国際金融市場での米ドル高による通貨台湾ドルを受けた輸入インフレも重なり、幅広い物価上昇に直面してきた。ただし、中銀による物価と為替の安定を目的とする利上げに加え、商品高の動きに一服感が出たことも重なり、足下のインフレは一進一退の動きをみせるも、一昨年半ばを境に頭打ちの動きを強めている。他方、中銀による金融引き締めは長期化しているにも拘らず、最大都市である台北市を中心とする不動産価格は上昇が続いて最高値を更新する展開をみせるなど、新たなインフレ要因となる懸念が高まった。こうしたことから、中銀は今年6月の定例会合では政策金利を据え置く一方、特定地域を対象とする住宅ローン規制強化のほか、預金準備率を25bp引き上げる引き締めに動いた(注1)。その後も不動産市況は一段と上昇して最高値を更新する展開をみせたことから、中銀は9月の前回会合でも政策金利を据え置く一方、住宅ローン規制を一段と強化するとともに、10月1日付で預金準備率を25bp引き上げるなど引き締め姿勢を維持する決定を行った(注2)。このように、このところの中銀は金融政策を巡って不動産市況の動向を注視する展開をみせてきたなか、最高値を追う動きをみせてきた台北市周辺の不動産市況は9月をピークに頭打ちに転じており、足下においても緩やかに下落するなどピークアウトする動きが確認されている。こうしたことから、中銀は今回の会合において政策金利を含むすべての金利を据え置くとともに、預金準備率も3会合ぶりに据え置くなど引き締め姿勢を休止させる決定を行っている。会合後に公表した声明文では、世界経済について「緩やかな成長が続いている」とした上で、先行きも「主要国中銀による金融引き締め解除の動きも追い風にモメンタムを維持すると見込まれる」としつつ、「米トランプ次期政権による政策運営や中国本土の景気減速、地政学リスクなどが下振れリスクをもたらす」との認識を示している。他方、同国経済について「内・外需双方で拡大が続いている」として「今年の経済成長率は+4.25%になる」と従来見通し(+3.82%)から上方修正し、先行きも「世界貿易の回復とハイテク関連需要がモメンタムをけん引する」として「来年の経済成長率は+3.13%になる」と従来見通し(+3.08%)から上方修正する一方、「米トランプ次期政権の政策運営が見通しに影響を与える」としている。また、物価については「足下では天候不順に伴う食料インフレに直面している」として「今年のインフレ率は+2.18%になる」と従来見通し(+2.16%)からわずかに上方修正する一方、先行きは「炭素価格導入や最低賃金引き上げなどの影響は懸念されるが、原油価格やサービス物価の鈍化が進む」として「来年のインフレ率は+1.89%になる」と従来見通し(+1.89%)を据え置いている。その上で、先行きの政策運営について「物価動向を注視するとともに、米トランプ次期政権の政策運営、主要国中銀の政策動向、中国本土景気の下振れリスク、地政学リスク、異常気象などに加え、台湾景気や金融市場を注視しつつ、必要に応じて適時適切に政策調整を行う」との考えを示している。また、会合後に記者会見に臨んだ同行の楊金龍総裁は「米トランプ次期政権の貿易政策の行方は大きな不確実要素であり、来年の経済成長を巡る重要な変数になる」とした上で、「現時点でより『ハト派』的な姿勢を採る可能性はなく、インフレが上方修正され、景気が好調に推移すれば現状よりも引き締まる可能性がある」と慎重姿勢を維持する考えを示している。足下の台湾ドル相場を巡っては、米ドル高の再燃を受けて頭打ちの動きを強めており、中銀は実体経済や金融市場の安定に悪影響を及ぼす場合は秩序維持の観点から為替介入を実施するとするなど、当面は『防戦』状態が続くと見込まれる。

図表
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以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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