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2025.01.29
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チリ中銀、インフレリスク警戒で利下げ局面の再休止を余儀なくされる
~「トランプ砲」のリスクは低いが、銅価格がペソ相場の足かせとなるなかで難しい対応が続く~
西濵 徹
- 要旨
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- チリ中銀は28日の定例会合で4会合ぶりに政策金利を5.00%に据え置く決定を行った。同国ではインフレ率が一時30年ぶりの水準に高進したが、中銀の金融引き締めや商品高一巡も重なり頭打ちに転じた。さらに、景気が一進一退の動きをみせるなど勢いを欠く推移をみせるなか、中銀は一昨年7月以降に断続的に累計625bpの利下げを実施した。しかし、足下のインフレは中銀目標を上回る推移が続くとともに、生活必需品を中心とするインフレやペソ安に伴う輸入インフレに直面している。中銀はインフレ加速のリスクを警戒して利下げ休止に舵を切った。中南米諸国は米トランプ政権の「関税砲」の脅威に晒されているが、チリは米国経済への依存度が相対的に低いなどそのリスクは比較的小さい。他方、銅価格がペソ相場の足を引っ張る展開が続くなか、中銀は利下げ局面からの転換を迫られる可能性に留意する必要がある。
南米のチリ中央銀行は、28日に開催した定例の金融政策委員会において、政策金利を4会合ぶりに5.00%に据え置く決定を行った。ここ数年の同国では、コロナ禍一巡による経済活動の正常化の動きに加え、商品高や通貨ペソ安に伴う輸入物価の上昇も重なる形でのインフレ高進に直面し、中銀は物価と為替の安定を目的に累計1075bpもの利上げに動いた。結果、一昨年後半にインフレ率は一時30年ぶりの水準に達したものの、中銀の金融引き締めや商品高の動きが一巡したことも追い風に、その後のインフレは一転して頭打ちの動きを強めた。さらに、中南米諸国においてはインフレ鈍化を受けて中銀が利下げに舵を切る流れが広がるなど『利下げドミノ』とも呼べる動きがみられたなか、中銀は一昨年7月に利下げに動くとともに、断続利下げを実施した。なお、中銀が断続利下げに動いた背景には同国の特徴的な経済構造があり、外需依存度は必ずしも高くない一方、財輸出の半分近くを銅が占めるなど、景気動向が銅の国際価格に連動しやすいことが影響している。銅の国際価格は中国景気の動向に左右されるため、中国経済を巡る不透明感が市況を通じて景気の足かせとなる展開が続いている。結果、ここ数年の同国景気は一進一退の動きをみせるなど、他の新興国のなかには回復感を強める動きがみられるものの、勢いを欠く推移をみせており、中銀は一時的な休止も含めて先月の定例会合まで累計625bpの利下げを実施してきた。他方、インフレ率は昨年初めに一時的に中銀目標(3±1%)の範囲内に収まるなど鈍化する動きをみせたものの、その後は目標域の上限を上回る推移が続いているほか、足下では緩やかに加速するなどインフレの再燃が懸念される状況にある。こうした背景には、中南米諸国における異常気象の頻発を理由に食料インフレが意識されやすくなっていることに加え、一次エネルギーの約7割を化石燃料が占めるなかで原油や石炭などの国際価格が高止まりするとともに、通貨ペソ安に伴う輸入物価の押し上げも重なり、生活必需品を中心にインフレ圧力が高まっていることがある。さらに、昨年はインフレが高止まりするなかで、主力産業である銅鉱山において賃金引き上げを求めて散発的にストが発生し、賃金の大幅引き上げに動く流れが広がりをみせたこともインフレ圧力を招く一因になっている。こうしたことも中銀が一段の利下げに二の足を踏む一因になるとともに、会合後に公表した声明文では、政策委員が全会一致で金利を据え置く決定を行ったことを明らかにしている。その上で、足下の同国経済について「生産活動は想定より良好」とする一方で「需要は想定通りに推移している」としつつ、「雇用を取り巻く環境は厳しいものの、賃金の伸びは依然高い」との見方を示している。そして、物価動向について「足下ではペソ安や人件費の上昇、電力料金の引き上げなどの影響を受けている」とした上で、「向こう2年のインフレ予想は上振れしている」との見方を示す。よって、「マクロ経済全体の動向は想定通りながら、インフレリスクが高まるなかで慎重な対応が必要になる」との認識を示すとともに、先行きの政策運営について「向こう2年のインフレ予想を目標(3%)に収束させるべく柔軟な対応を図る」との考えを示している。足下の中南米諸国は米トランプ政権による『関税砲』の脅威に晒される事態に直面しているが(注1)、チリでは輸出入ともに中国向けが米国向けを上回るなど米国経済への依存度が相対的に低く、周辺国と状況は大きく異なる。また、足下では米トランプ政権による政策運営を警戒した米ドル高の動きに一服感が出ているものの、ペソ相場は銅の国際価格の上値が重い動きをみせていることが重石となるなど、輸入インフレ圧力に晒されやすい環境が続いている。その意味では、中銀は利下げ局面の本格的な転換を迫られる可能性に留意する必要がある。



注1 1月28日付レポート「中南米で展開される米中競争は「トランプ関税砲」で一段と激化へ」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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西濵 徹

